昨年の今頃話題となった、YZF-R7の純正ラジアルマスター。
何せブレンボマークが付いているのに、純ブレンボ比半額で手に入ると言うことから、車体よりも前に部品が欠品するという騒ぎまで起きましたね。
このラジアルマスターはピストンサイズがφ14mmなので、一般的なネイキッド系の主流サイズ。これを使いたい人のほとんどは、ノーマル横押しマスターをラジアルに換えるためだと思います。
ワタシはこいつをφ16mmセミラジアルを持つR1に入れることとしました。
通常であればマスターシリンダーサイズを下げることは、
ブレーキの効きが悪くなる。サイズダウン = グレードダウン。
と言うマイナスイメージでしょう。こんなことを1L SSでやるなんてみたいな。
でもワタシの目的はまさにそこ。
サーキットでも一本指でブレーキをかけるワタシにとっては、純正φ16mmのカチッとしたフィーリング+ショートレバーだと、短いストロークでレバー比の悪いところで握るため、かなり指の負担が大きいのです。そうで無くても短い指で、酷いばね指故に、30分走ると後半は指が動かなくなるくらい疲労します。
そこで対策を考えていました。
まず、小さい力で同じ圧力を出すためには次の式から、
P (圧力) = F (握る力) / A (受圧面積=ピストンサイズ半径の二乗×π)
Aを小さくすれば、小さいFで同じPが得られることが分かります。
つまりピストンサイズを下げることが有効。
※厳密には力はレバー比なども絡むのですが、そこはいったん固定として。
で、ピストンサイズを下げる弊害は何か?というと、液量の問題です。
まずキャリパー側のピストン系は変わっていないので、同じ量パッドを動かすには、同じ量の液を送る必要がありますよね。
マスターシリンダーサイズが小さくなった=面積が小さくなったので、同じ量=体積を送り込むには、よりストロークさせないとダメと言うことになります。この液量が足りないと、レバーストローク一杯動かしても、パッドを押し切れなくなります。
なので、キャリパーを変えないなら常識的にはマスターのシリンダーサイズは、1サイズ小さくするくらいが限界じゃ無いでしょうか。今回のφ16→φ14の様に。
要は、力でコントロール → レバーストロークでコントロール するようにしたかったと言うことですね。
早速交換作業です。
R7のフロントマスターはこの単位で手に入ります。
レバー交換とか考えず、まるごと交換ならあまり悩まずに行けるでしょう。でもワタシはレバーを交換したかったのでちょっと罠にはまりました。
シリンダー周りを比較してみます。
左がR7のラジアルマスター+Activeのレバーホルダー+ブレンボのショートレバー。
右がこれまで使っていたR1のセミラジアルマスター+Zetaのレバー。
レバーのピポット位置もちがいますし、プッシュロッドの位置も違います。
セミラジアルはレバー比変化が大きいみたい。
そして手持ちのレバーを使おうとして罠にはまったのがこのプッシュロッド。
ブレンボがよく使う、タイコにねじ込み+カシメ固定のタイプ。
これはホルダーがコの字のオープンタイプじゃ無いと使えません。
でも手持ちのホルダーは、丸囲みのクローズドタイプ。
プッシュロッドだけを入手するのが出来そうに無かったので、ワイズギヤのレバーを手配して切り抜けます。
これで組み込み準備が完了。
ちなみにワイズギヤのレバーは、ActiveのレバーのOEMみたいでしたよ。
タンクとシリンダーを結ぶホースをR1の整形ホースに換えてやれば、あとはぽん付けと言っていいでしょう。
ハンドルを切っても干渉しません。
そもそも最近のSSは、ラジポンなどに換えることも前提の寸法設定になっていますから、綺麗に収まります。
バンジョーの回り止めはR1とR7で位置が違うため使えなくなりますが、フォーク側でホースを固定しておいてやれば、緩み懸念も無くなります。
エア抜きして早速試走。
タッチが優しくなりました。そしてR1には液圧のモニターが付いていますが、狙ったメモリ位置の油圧をキープすることも自由自在に。握り側も戻し側もかなりコントロール幅が上がります。
街中レベルでは全く問題なしのいいことばかり。
組み替えた甲斐がありました。
後はサーキットでの制動でどれくらいかですね。
熱が入ってきてレバーをフルストロークさせるところまで握ることになるかどうか。春になったら試してみます。
おまけ:
現行MT-10SPもブレンボのフルラジポンを使っているようです。こちらはφ16mmっぽいので、サイズダウンさせずにラジポンが欲しい方は、こちらを調査するのもいいかと。
2023.07.18追記
実際にサーキットで使ってみた様子はこちら↓